A7手帳、浅海散子

A7サイズの手帳。何かを書く。

“ペンホルダー”紙屋文章(かみやふみあき)

紙屋文章はカミヤ総合事務所を営む自営業の20代男性である。

所では事務処理や契約手続、書類鑑定などの書類仕事全般に関する相談を受け付けている。立地は最寄駅から徒歩15分、学生アパートなどが並ぶ裏通り沿いであり、通りすがりの住人が訪れることはまずない。

腕のある筆跡鑑定士なら紙屋の名を知っていることだろう——あまり良い評判ではないかもしれないが。

会社の破綻、致命的な契約ミス、遺産相続の失敗、病死の直前。紙屋の仕事は、そのようなもはや手遅れになった問題を丸く収めることである。